ヤマセミの軌道を描くジオグラビティーパーク秩父のキャニオンスイング
ヤマセミという鳥をご存知でしょうか。埼玉県では秩父、長瀞にも多く生息していると言われていますが、なかなか人前に姿を現してはくれません。ヤマセミの生態は非常に特徴的です。渓谷の岸壁の小さな穴を巣にし、夫婦つがいで生活します。幼鳥のみ巣穴に残し、夫婦のヤマセミは決まって定位置に移動します。
ヤマセミが定位置とするのは、川の上まで長く張り出した葉の無い一本の木の枝です。河原の広い場所では両岸の樹木から流れの真上までは枝が届きません。このような定位置の枝と、巣穴を作れるような岸壁、そしてその高い位置にある枝の上から餌となる水中の小魚を目視できるだけの水の透明度、これらの条件を満たすのは山奥の渓流の上流部しかありません。荒川上流は深いV字谷が続き、両岸の岸壁から青々とした樹木が川に覆い被さらんばかりに繁っています。まさにヤマセミが好む条件が揃っています。
数十メートルという高さの岸壁から地面に水平に横に伸びた一本の枯れ枝は、川の流れと直角に交差します。水面上空のその木の枝の上でヤマセミの夫婦は仲良く並んで1日の大半を過ごします。荒川の鋭角に深くえぐられた渓谷を、その直上数十メートルの枝の上から見た景観は格別のものでしょう。ただヤマセミがそこを定位置とする理由は、景色を眺めるためだけではありません。巣穴で待つ幼鳥達に与える餌となる小魚を虎視眈々と狙っているのです。
ヤマセミが小魚に狙いをつけると、その魚に直接向かうのではなく、自分足元の真下の水面に向かって、目にも止まらぬ速さで飛びます。それは飛ぶというより、落下するといった方が良いかもしれません。そうして水面近くまで高度を落としたヤマセミは滑り降りるように、それは双曲線がX軸に近づくようなカーブを描き、その勢いで水中に潜り小魚を捕まえるのです。
冒頭から大幅に話が脱線してしまいましたが、今回紹介するジオグラビティパーク秩父のキャニオンスイングというアトラクションからこのような光景を想像せずにはいられませんでした。キャニオンスイングはバンジージャンプとともにジオグラビティーパーク秩父の二枚看板です。バンジージャンプは誰もが知っている垂直落下のアトラクションです。キャニオンスイングはほとんどの人が聞きなれない単語だと思います。なにしろキャニオンスイングを体験できるのは、日本で唯一ジオグラビティーパーク秩父のみなので、ジオグラビティーパーク秩父をご存じ無い方にとっては、知らなくて当然です。キャニオンスイングはバンジージャンプと同様垂直落下から始まりますが、その後空中を滑るように水面に近づいていきます。結果的に描かれるのは、先ほど挙げたヤマセミの急降下飛翔と類似する軌道です。
所在地:埼玉県秩父市荒川贄川730-4
営業時間:9:00~16:00(季節変動あり)
定休日:不定休
対象年齢:15歳以上
対象身長:140㎝以上でハーネスがフィットすること。体重制限は無し。
服装等:ハーネスが装着できない服装(スカート・コート)などは不可。ハイヒールなども不可。
落下しやすい持参物は全てロッカーに預けます。スマホ等は手首に固定されたホルダー(レンタル料500円)につければ使用可。GOproレンタル料3,000円
最寄り駅:秩父鉄道 三峰口駅(徒歩11分)
キャニオンスイング
落下距離47m
料金:12,000円
キャニオンバンジー
高さ50m
料金:1回目14,000円 同日の2回目 5,000円
キャニオンウォーク+キャニオンフライ
最大高度:(キャニオンウォーク)54m (キャニオンフライ)60m
長さ:約100m
ジオグラビティーパーク秩父の予約 (アクティビティジャパン)
秩父にしか無いアトラクション:キャニオンスイング
埼玉県秩父市にある、秩父ジオグラビティパークのキャニオンスイングは日本初のアトラクションです。キャニオンというのは渓谷の意味で、埼玉県の最高峰甲武信ヶ岳から秩父・長瀞へと続く大河、荒川上流部の渓谷が舞台となります。荒川渓谷の北岸、高度50mから枯れ枝のように張り出した架橋の先の鉄柵の中にキャニオンスイングのブランコは設置されています。ブランコはバンジージャンプの要領で垂直に落下します。ある程度高度を落とすと、ブランコは空中を滑るように前方にスライドして水面に近づいていきます。もちろんヤマセミのよう水中に潜ることはせず、水面と水平に移動し、勢いがなくなるまでブランコのように行ったり戻ったりしながら、制止しするまで続きます。完全に制止したらブランコはスタート地点の高さまで引き上げられ終了です。
この動画を見ると、明らかにバンジージャンプとは違うということがわかります。他のバンジー施設がこれを真似ようとしても、容易ではないでしょう。まずキャニオンスイングをするには深い渓谷が必要です。そしてその渓谷は広すぎても、狭すぎてもできません。例えば竜神大吊橋のような広いダム湖のような場合、ブランコの支点を作るのが容易ではありません。また、谷が狭すぎる場合、ブランコが突風で横に流された場合、岸壁に衝突する危険性があります。
関東では東京のよみうりランドや、千葉県のマザー牧場にもバンジージャンプがあります。もしこれらの場所でキャニオンスイングのようなものを人工で作るとすれば、50mもの鉄塔を4本立て、そのうち2本にワイヤーを通し中間部分にブランコの支点を作ります。残りの2本の鉄塔を繋ぎ、その中間部分をスタート地点とします。あまりにも大がかりな大工事となり、現実的ではないでしょう。あとは群馬県みなかみ町の2つのバンジージャンプ施設ですが、これらは既存の橋を利用した自治体が主催のバンジージャンプですので、大掛かりな工事や他所の真似をするということになると、反対の声が上がる可能性があります。当分の間、キャニオンスイングはジオグラビティーパーク秩父の専売特許ということになりそうです。現時点ではキャニオンスイングを体験するには、国内では埼玉県秩父市に行くことが、一番の必要条件になります。
キャニオンスイングはバンジーブランコと呼ばれることもあり、どうしてもバンジージャンプの一種と認識されがちです。バンジージャンプはスリルや恐怖感を追求し、100m級や200m級など次々と高さの記録を更新してきました。ジオグラビティーパーク秩父はこれらのバンジージャンプ施設の中では後発の施設にあたります。ジオグラビティーパークが高さ競争やスリル競争に加わらず、何を追い求めてきたか。その手掛かりはジオグラビティーという名称にあります。「ジオ」はギリシア語で地球を表す単語で、地質学を表す英語「ジオロジー」の接頭語でもあります。ジオパーク秩父をはじめ日本に46か所あるジオパークも、そのような意味で名づけられました。「グラビティー」は重力の意味です。ジオグラビティー秩父のアトラクションからは重力運動の法則を最大限に活用し、秩父の大渓谷の地形や自然そのものを楽しもうという発想が浮かび上がります。
秩父という地域は、ジオパークに選定されているだけではなく、近代地質学発祥の地とも呼ばれています。そしてジオグラビティパーク秩父のある三峰口、白川橋付近は地質学的にも重要な地点です。ここが奥秩父山地と秩父盆地のちょうど境界点にあたるのです。上流の狭い渓谷が、この辺りを境にして、広い河川敷に変化していきます。それだけではなく、地層的にも上流部の固い秩父帯の岩石から、比較的軟らかな古秩父湾堆積層に変化する境目であることがわかっています。もちろん高速で動くブランコの上からそれを観察できる術はありませんが、そのことに説得力を持たせるだけの、素晴らしい景観が広がっています。三峰口から白川橋を渡ると、すぐ目の前にジオグラビティーパーク秩父のつり橋やワイヤーなどが目につきます。そこから下を見おろすと、険しくも美しい荒川の渓谷が見られ、流れの近くまで下って行きたい欲求にかられます。しかし両岸ともに険しい岸壁に挟まれていますので、そこに荒川まで降りることができる一般の道はありません。
ジオグラビティーパーク秩父で、キャニオンスイングが出来る以前は、バンジージャンプが唯一そこで荒川水面に近づくことができる手段でした。バンジージャンプの数秒が終わるとすぐさま引き上げられてしまうのは、余りにももったいないというのは誰しもが感じることでしょう。水面近くまで急降下し、そこから川面に水平移動するというムーブは、ここ秩父においては最適解ということができます。ただスリルを追うだけのバンジージャンプに全く興味を持てない人であっても、キャニオンスイングのブランコからの眺望には心を奪われる人は多いのではないでしょうか。
秩父ジオグラビティパークにかかる吊り橋は、人ひとりがやっと通れる幅の、そして足下から谷底が見えるスリリングな橋です。もちろん吊り橋を渡る前からハーネスとロープでロッククライミングの要領で安全確保します。ここまで厳重安全確保する理由は吊り橋を見てもらえると一目瞭然です。この吊り橋自体がキャニオンウォークという一つのアトラクションにもなっており、これとキャニオンフライと名付けられたジップラインをセットで体験することもできます。では秩父ジオグラビティパークの各アトラクションを見ていきましょう。
ジオグラビティーパーク秩父のバンジージャンプ
秩父ジオグラビティパークのアトラクションの一つにキャニオンバンジーというのがありますが、これは普通の垂直落下のバンジージャンプです。キャニオンバンジーはバンジージャンプとして国内有数の高さを誇ります。国内上位の他のバンジージャンプは全てブリッジバンジーと呼ばれ、既存の橋の片隅に飛び込み台を設置し、そこから飛び降りる形式です。秩父ジオグラビティーパークのキャニオンバンジーは吊り橋を中央まで歩き、そこから並走するゴンドラに乗り移り、ゴンドラから飛び降ります。
全てのシステムを独自に建設したバンジージャンプ施設の中ではジオグラビティーパーク秩父が日本最大です。前述したブリッジバンジーを含めると、ジオグラビティーパーク秩父より高さのあるバンジージャンプはいくつかあります。単純にスリルと高さを追い求める人にとっては、ジオグラビティーパーク秩父のバンジージャンプは物足りなく思うかもしれません。
ジオグラビティーパーク秩父の全てのアトラクションは、受付時にハーネスを装着することから始まります。ハーネスとは体に巻き付けるベルトのことで、このハーネスはカラビナという鉄環でロープと接続し安全を確保します。ハーネスには大きく分けて二種類あり、フルボディーハーネスとシットハーネスがあります。シットハーネスは腰から下のみに巻き付けるのに対し、フルボディーハーネスは全身にセットします。落下時の衝撃を広く分散させることができるフルボディーハーネスが最も安全だと言われています。またフルボディーハーネスは、落下した際に反転し頭が下になることを防ぐと言われています。
ジオグラビティーパーク秩父は、この最も安全といわれるフルボディーハーネスによる安全確保をしています。これは、バンジージャンプを普通に飛んだ場合、足から落ちることが多いということを意味します。フルボディーハーネスを使う他の地域のバンジージャンプの場合、足首にもロープを繋げ、あえて頭が下になるような工夫をしているところもありますが、ジオグラビティーパーク秩父の場合はスリルを追うよりも、自然体で飛んで楽しんでもらうということに重点を置いているのだと思います。
頭が下に落下して危険というのは、あくまでも登山やクライミングの場合です。頭上に支点があり、そこからロープをつるすトップロープの場合は、落下してもすぐ止まるので問題ありませんが、登山やクライミングの場合、トップロープがなく、自分で支点を作りながら登る、リードクライミングという登り方があります。その場合、足元より下に支点があることが多く、落ちた勢いで崖に体が打ち付けられる危険性があるからです。
バンジージャンプの場合、常にトップロープで、打ち付けられる崖などはありませんから、どのような体勢で落ちたとしても全く安全です。あえて頭を下に落とす他所のバンジージャンプが危険ということは全くありません。ただ、そのような恐怖感の中では、景色を堪能している余裕など全くないと思います。ジオグラビティーパーク秩父の足から落ちるスタイルは、スリルと同時に景観も楽しんでほしいという施設側の願いの現れの一つで、その延長線上にバンジーブランコとも呼ばれるキャニオンスイングという新商品が生まれたのだと思います。
ジオグラビティーパークでバンジージャンプをやる場合、もしどうしてもスリルがほしいのであれば、高飛び込みの要領で頭を下にジャンプすれば、ロープでの制動がかかるまでの間は上下逆さまのスリルを味わうことはできます。それがちょっと怖いと思う方や、秩父荒川の大渓谷を落ち着いて目に焼き付けたいという方は、普通に足からジャンプすれば、逆さまにならずに飛ぶことができます。いずれにせよ、首都圏最大のスケール感とスリルは揺るがないでしょう。
キャニオンウォークとキャニオンフライ
多くのバンジージャンプ施設、とくに50m以上の大型ブリッジバンジージャンプ施設のアトラクションはバンジージャンプのみです。それは公共の橋を利用した施設のため、あれもこれもと自由に作ることができないからです。
ジオグラビティーパーク秩父は全て自前の設備のため、自由に増設できます。ジオグラビティーパーク秩父のアトラクションは既にキャニオンスイングとキャニオンバンジーを紹介しました。その他にキャニオンウォークとキャニオンフライというアトラクションが用意されています。キャニオンウォークとは吊り橋渡り、キャニオンフライとはジップラインのことです。基本コースは往路で吊り橋を渡り、復路をジップラインというセットで3500円です。ジップラインは往路にも用意されており、往復ジップライン・往復吊り橋という組み合わせも可能です。
皆さんは吊り橋というとどのような物を想像しますか。静岡県の三島スカイウォークのような巨大な鉄製の橋を思い浮かべる方もいれば、徳島県祖谷のかずら橋のような物をイメージする人もいるかもしれません。
三島スカイウォークの場合、橋の床板は完全に鉄板で覆われており真下の景色は見ることができません。伊谷のかずら橋の場合、床板と床板の隙間から水面を見ることができますが、360度の展望というには障害物が多すぎます。埼玉県ジオグラビティーパーク秩父において、吊り橋の床板は2本のワイヤーの間に薄い木の板を、人が歩ける最小限の枚数だけかけてあるだけです。かずら橋タイプの木製の吊り橋でも、ここまで床板と床板の間隔があいている橋は存在しません。板と板の間から人が落ちる危険性があるからです。
なぜジオグラビティーパーク秩父の吊り橋はこのようなことができるのかといいますと、吊り橋と欄干を作る4本のワイヤーの他に、頭上に通るもう1本の別のワイヤーで万全の安全確保をしているからです。ジオグラビティーパーク秩父の吊り橋キャニオンウォークの安全確保の方法は、キャニオンスイングやバンジージャンプと全く同様です。トップロープでワイヤーと繋いでいるのですから、例え落ちても荷重は人間の体重程度です。ここまでの安全確保システムの必要は無く過剰とも言えます。やはりこれも、安心して360度の眺望を楽しんでほしいというジオグラビティーパーク秩父の配慮の現れでしょう。
ここまでの安全体制があると、逆に吊り橋を踏み外して、トップロープに吊り下げられてみたいというような欲求が湧いてくるのも無理からぬことです。もし踏み外して吊り橋に戻れないようなことがあった場合、スタッフがすぐにゴンドラで拾いあげてくれます。だからといって故意に踏み外すようなことはやめて下さい。板の間隔は相当広いですが、普通に歩いていれば踏み外すようなことはありません。故意の踏み外しは他の顧客の予約スケジュールを狂わせる原因になりますので、くれぐれもしないようにして下さい。そのようなことをしなくても帰路のジップラインはそれと同様、あるいはそれ以上の爽快感を得ることができます。
吊り橋のゴール地点、すなわち荒川の南の岸壁の上は帰りのジップラインのスタート地点でもあります。ジップラインのスタート地点は鉄塔の上にあり、高度60メートルです。ジオグラビティーパークの他のどのアトラクションよりも高い位置から滑り降りるということになります。荒川の水面から見れば、高度60メートルの上空を飛んでいるように見えます。スキーリフトなども高く感じますが、その鉄塔の高さはせいぜい10メートルくらいでしょう。高さ60メートルというと20階建て高層マンションと同じくらいあります。もし平地に高度60メートルのジップラインを作ろうとすれば、高層マンションなみの鉄塔を何本も建てる必要があります。何百メートルのジップラインというキャッチコピーをよく見かけますが、それは高さでは無く、スタートからゴールまでの距離の話です。それらは高度にするとさほどでもありません。ジップラインという使う器具は同じであっても、全く別のアトラクションと見てよいでしょう。