今まで当サイトでは埼玉旅行、特に秩父旅行や長瀞旅行についてページを割いてきました。埼玉県内からの旅行や、羽田空港、東京方面からのアクセスについても説明してきました。そうなると、次に来るのは埼玉県と長い県境で接する群馬県からの埼玉旅行です。
群馬県と埼玉県は経済的な結びつきも強く、人の往来はかなり多く、それは両県をまたぐ電車の本数、車の通行量からも一目瞭然です。しかし、その割に群馬県在住の人の埼玉への旅行する機会は少なすぎるという実感があります。群馬県の交通の要衝である高崎市から、大宮へは新幹線で30分、熊谷へは15分で到着します。そこからは埼玉県内在住者とほとんど変わらない時間と手間で埼玉各地への旅行ができるはずです。
群馬県から埼玉への旅行が少ない理由
群馬県からの埼玉旅行が少ない一つの要因として、埼玉県の旅行関係者が群馬県に対するマーケティングやアピールの不足が挙げられます。群馬県のホテルや旅行観光施設の営業の方は、良く埼玉県まで来て、埼玉の零細旅行会社にまで積極的に来ていました。私が知らないだけかもしれませんが、埼玉県の旅行関係施設が群馬県の零細旅行会社に営業しているのはあまり聞きません。
私は以前、インバウンド旅行のため、群馬県のある自治体の観光旅行課に問い合わせしたことがあります。親切に回答頂いただけではなく、手作りの資料を何十枚も冊子にしたものや群馬の観光地紹介の手製のDVD ROMまで送って頂いきました。旅行客を呼び込もうとする意気込みが自治体からして非常に強いのです。埼玉県は近くに首都圏という大商圏があるため、群馬県への営業活動が少なすぎました。
要因はもう一つあります。
群馬県は草津温泉、伊香保温泉をはじめ、水上、猿ヶ京、四万、万座、老神など錚々たる温泉地を有し、その他赤城、榛名、妙義の上毛三山、尾瀬、吹割の滝など有名な観光地も多数あります。これらの有名観光地は群馬県内からも多数旅行者が訪れます。
群馬県在住者が県内の旅行をする方向と埼玉県の観光地、特に秩父・長瀞・川越などの埼玉県の主要観光地がある方向がずれてしまっているからです。例えば神奈川県在住者が県内旅行で箱根に行った際、すぐその先の静岡県の熱海も観光してみようということは良くあることです。方向が違うと、そのような現象はほとんど起こりません。
埼玉旅行と群馬県南西部の観光地
前項では、神奈川県の箱根と静岡県の熱海の例をとりあげました。埼玉県の長瀞・秩父を熱海に例えると、神奈川県の箱根にあたる地域はどこになるのでしょうか。
長瀞や秩父に最も近い群馬の地区は群馬県多野郡と群馬県甘楽郡です。多野郡には上野村と神流町、甘楽郡には南牧村、神流町、下仁田町という町村が所属しています。この中で下仁田町は上信越自動車道が通り、上信鉄道の終点でもあるためある程度しられています。このエリアの北辺にあたる妙義山は有名な名勝です。しかしその先の埼玉県までの多野郡・甘楽郡には、まるで水墨画のモデルになるような美しい山村が広がっているのです。
群馬県甘楽郡の南牧村旅行
9年前の3月、私は群馬県甘楽郡の南牧村に一泊2日の一人旅をしました。私は当時登山に凝っていて、この地方の山に興味を持っていました。埼玉の秩父や奥秩父の山に多く登っていましたので、そこから見る群馬県の山々は非常に魅力的に見えました。晴れ渡る日は、妙義や榛名山のほうまで良く見えるのですが、その手前に標高はそれほど高くないものの、奇妙な形をした山がたくさんあるのに気付きました。
調べてみると、そのエリアの山は登山関係者の中では西上州と呼ばれている山地でした。
埼玉県の山は比較的緩やかで初心者向けの山も多いのですが、群馬県の西上州の山はことごとく急峻です。鹿岳(かなたけ)、四つ又山、三ツ岩岳の3山に目星をつけ、南牧村に向かいました。詳しい旅程などは後日に回します。何枚かの写真をお見せしますので、その雰囲気だけでも感じとっていただけると嬉しいです。残念ながら天候に恵まれず、良い写真はありませんが、この地域の秘境感はわかってもらえるかもしれません。
私はこの時、高崎から上信鉄道で終点の下仁田でおり、そこからコミュニティバスのようなもので南牧村へ向かいました。地図をみると、群馬県甘楽郡南牧村は埼玉県の秩父からの距離の方が遥かに近いのです。
下仁田と秩父はともにジオパークに選ばれているという共通点を持ちます。ジオパークは観光地であるかどうかに関わらず、地質学的に重要な地形を持つかどうかで選ばれています。埼玉県長瀞の特殊な地形と、下仁田、南牧村の特殊な地形は見比べることによって更に価値が出ます。
民宿のご主人からは、このような話も聞きました。私が最後に向かった三ツ岩山へ向かう大仁田川沿いの道は、昔は峠越えの行商のための山道だったと聞きました。その道は現在三ツ岩山登山口のある大仁田ダムで行き止まりになっています。
地図を確認すると、大仁田川はダムを超えて群馬県上野村との間の稜線付近まで続いています。昔の山道の多くは沢沿いに作られていました。沢の上流部は水量も少なく、雑草も少ないため歩きやすいのです。おそらく、この大仁田川の上流部の沢沿いに古道と稜線越えの峠があったと思われます。その峠を越えるとちょうど、上野村の十石峠あたりの国道299号線にぶつかります。その299号線こそが群馬県と埼玉県の県境を越えて、秩父へと続く道なのです。
現在は県道45号線を車で走れば、南牧村から上野村に出て299号線まで秩父へ行くことも可能です。それを埼玉と群馬を繋ぐ旅行コースとして紹介するのは、まだ少しためらわれます。もう少し歴史的背景などを調べてから紹介したいと思います。