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ホテル・旅館とホスピタリティ

同じホテル・旅館であってもホスピタリティは変わる

 ホスピタリティとは、ホテルや旅館などのサービスに関して良く使われる言葉で、「思いやり」「おもてなし」などの意味です。

 ホテルや旅館が顧客に対する定型的なサービス以外での、気配りや接客態度などを指します。

 お客様がホテルや旅館を選ぶ際のに、重要な要素は、価格、利便性、設備などが挙げられます。そしてそれらは事前に情報を得ることができます。

 しかしホスピタリティだけは、実際に行ってみないとわかりません。口コミなどを見ると、同じホテルであっても、評価が両極端に分かれているのを良く見かけます。同じ価格、同じ条件で泊まったとしても、Aという人が感じるホスピタリティの良さと、Bという人が感じるホスピタリティの良さは違うので、当然ともいえます。

 それは感じ方だけの問題ではないかもしれません。ホテル・旅館側も無意識に、あるいは意識的にお客様ごとに差をつけている可能性があります。このように言うと、けしからんと思う方もいるかもしれませんが、ホテルや旅館の立ち場からすると、それも無理からぬことなのです。

EXETIME(エグゼタイム)

同じホテル・旅館でもホスピタリティに差が出る理由

 あるホテルに10室の部屋が空いているとします。その100室は全て同じ価値ではありません。エレベーターからの距離や見える景色、老朽化具合も違うかもしれません。階数やオーシャンビュー、マウンテンビューなど価格差をつけて解決できることもありますが、解決できない場合もあります。

 もし価格差がつけられなかった場合、早いもの順で良い部屋を割り振りますか?

 ホテルの立場でいうと、そうもいきません。常連客、これから常連客になってくれそうな人には良い部屋、一回限りしか利用しないと思われる人には、あまり条件の良くない部屋を与えます。

 ホスピタリティにも同じことが言えます。ホテル、旅館の従業員は忙しいものです。限られた時間・エネルギーを、それぞれのお客さまに割り振るということを考えた場合、やはり常連客や、見込み客を手厚くもてなすというのは合理的な判断だと思います。逆に迷惑客や、もう来てほしくないような人には、クレームにならない程度に冷淡に扱う場合もあります。

観光地におけるホテル・旅館の常連客とはどういう人なのか

 レストランや居酒屋などの場合、毎日のように訪れる常連客が実際に存在します。

 観光地のホテルや旅館の場合、本当の意味での常連客は多くありません。ホテル・旅行にとって一番の常連客、上得意客とは、大手旅行会社なのです。

高水準のホスピタリティを受けるには

 日本旅行、JTB、近畿日本ツーリストといった大手旅行会社は何十年に渡り、ホテル・旅館に大量の顧客を送客し続けてきました。

 日本旅行であれば「旅コレクション」、JTBであれば、「エース」、近畿日本ツーリストであれば「メイト」といった定番国内ツアー商品に使われる旅館やホテルは、それぞれの旅行会社が長年に渡り厳選し、繰り返し毎年使用している定番の宿泊施設です。各旅行会社が設備面、ホスピタリティ面も含め最も看板ツアーに相応しいと信頼されているホテル・旅館だけが選ばれているのです。

 大手旅行会社に長年選び続けられているホテル・旅館は、その信頼に応えようと大手旅行会社を経由したお客様一人ひとりに手厚くもてなします。それは国内ツアー商品の場合だけではなく、宿泊だけの場合であっても、それらの大手旅行会社を経由することによって、レベルの高いのホスピタリティを受けられるのです。

 なお、近畿日本ツーリストについてですが、パッケージツアーをダイナミックパッケージとクラブツーリズム事業に集約するという方針のもと、2021年3月で国内ツアーブランド「メイト」は終了しました。JTBや日本旅行にしても、WEB販売については、ダイナミックパッケージが主力になってきています。

  通常の国内ツアーの場合、ツアーを制作する担当者が、そのツアーへの思い入れを込めて丹念に作りこまれたものです。それに対してダイナミックパッケージというのは、顧客側がWEBで移動手段と宿泊施設を選び組み合わせるものです。国内ツアーもシンプルになってきて、単に航空券とホテルの組み合わせたものが多くなりました。しかし、その場合でも、想定する客層に合わせ、パンフレットのデザインからキャッチフレーズ、使う写真など入念に作り上げて集客するのです。ダイナミックパッケージというのは、無駄もなく合理的な反面、無機質過ぎるような気もします。

  いずれにしても、大手旅行会社がホテルや旅館にとっての最も重要な取引先であるということには変わりません。ダイナミックパッケージであっても、大手旅行会社のサイトで表示されるホテル・旅館は、ホスピタリティ面においても、必ず一定水準を上回っているといって差し支えありません。

ホスピタリティのバランス

 何事においてもそうですが、人は期待を上回ったとき感動し、期待はずれの時はがっかりします。ホテル・旅館のホスピタリティについてもあてはまります。例えば接遇が良いと評判のホテルに行ってみると、スタッフの接遇が悪かったとします。接遇が悪いと評判のホテルなら、仕方ないですまされるようなことでも気になるのではないでしょうか。

 かつて、こんな事がありました。

 私は海外の旅行会社に、日本のある地域の4泊5日旅行手配の仕事を受けました。そのお客様は海外の富裕層で、家族との訪日旅行先として、その地域を指定していました。その他にもホテルは必ずプール付きなど、さまざまな条件提示があり、広範囲で移動するため、それぞれの日程で別々のホテルをとる必要がありました。予算はかなり多くありましたので、それぞれの移動先で、最高級のホテルのスイートルームを手配しました。ただ、最初の一泊だけどうしてもランクが下がるホテルにするしかありませんでした。

 一泊目の移動の範囲で、提示条件に合うホテルはそこしかなかったのです。そのお客様と私は、来日まで一度も直接話したこともないまま当日を迎えました。

 私と海外旅行会社の社員、計2名が全日程同行しました。結果的には、なんとその一泊目のランクが落ちるホテルが一番満足してもらったのです。ホテル側には事前に事情は全て話しており、最善をつくすといわれてましたが、まさかここまで優遇してもらえるとは私も思っていませんでした。

 スイートルームとは言えないものの、最上階の景色の良い、そのホテルで一番広い部屋を使わせてもらいました。こちらからは頼んでいないのに、ロビーにあるマッサージチェアを一台、その部屋に設置したそうです。

 その家族を何より喜ばせたのが、その出迎えです。私たちが到着すると、フロントやポーターの他、数名のスタッフ、支配人自らエントランスに出迎えにきて、全員が名刺を渡し深々とお辞儀をしたのです。

 一泊目はランクが落ちる件は、既にお客様には伝えていましたので、あまり期待していなかったと思います。しかし予想外のお出迎えで、彼はすっかりそのホテルを気に入ってしまいました。

 夕食についても、特筆するような料理ではなかったものの、ずっと一人のホテルの女性スタッフが付きっ切りで料理の説明をしてくれました。過剰ともいえるようなサービスです。

ただこの場合は、見事に客の心をつかんだのです。

 2泊目のホテルはその地域で最高クラスのホテルです。何事もなく過すことができました。

3泊目のホテルは、2泊目のホテルよりは落ちるものの、悪くないホテルです。しかしここで悲劇は起きました。そのホテルでは、一人のホテルスタッフが普通に出迎えました。ホテルのロビーで若者が多少騒いでいたのが気に入らなかったのか、彼は「ここの客層は良くない」と呟いていました。荷物を部屋まで運んでくれたポーターが去り際目も合わせず、首だけで会釈をしてすぐ出ていきました。このあたりから、お客様は明らかに機嫌が悪くなりました。

 その後何やらいろいろと、同行のその海外の旅行会社の社員に文句を言っていたようです。最後には、このホテルは空気が悪いから窓をあけてくれと言い出し、できないというと、もう国に帰ると言い出しました。最終的に海外の旅行会社の社長と直接電話で話して納得してもらい、次の日からは機嫌を直していました。

 3泊目のホテルは2泊目のホテルよりは若干劣るものの、1泊目のホテルに比べると部屋の広さ、設備、料理どれをとっても上です。違いはホスピタリティだけだったのです。

そのホスピタリティも悪かったのかというと、私の目から見ると、全く悪いとは言えないのです。目についたのはポーターのお辞儀の角度が浅かったくらいです。あまりにも一泊目が特別待遇されすぎたため、三泊目のホテルがひどいホテルに見えてしまったのです。

 旅行会社がツアーを組む場合、1日目だけを良いホテルにしたり、観光の目玉を持ってきたりということはしないはずです。旅行全体を見渡し、バランスの良い配分にしたり、あるいは最後に旅行で最も感動的な場面を見せたりします。ただホスピタリティについては、旅行会社のコントロールできない部分が多いのです。

 今回のケースの場合、1泊目のホテルのホスピタリティがあまりにも優れていたため起きた失敗ということもできます。しかし、これは全て私の実力不足からきた失敗です。そのホテルは初めて利用するホテルでした。私にもう少し経験値があれば、事前に一泊目のホテルと入念に打ち合わせをして、どのように対応してほしいということまで決めることはできたのです。当時の私はホスピタリティをコントロールするなどという考え自体浮かびませんでした。

 日本旅行、JTB、近畿日本ツーリストといった大手旅行会社が、何十年も同じ宿泊施設を使い続けているということは、何万件もお客様を送り、その中にはたくさんの失敗があったと思います。そのような失敗を乗り越えて、旅行会社とホテル・旅館との信頼関係は強固になっていきます。パッケージツアーに使う宿泊施設間の、ホスピタリティのバランスも当然考慮しています。

OTA(オンライン宿泊予約エージェント)とホスピタリティ

 ホテル・旅館は、OTAと呼ばれるオンライン専門の宿泊予約エージェントから予約することもできます。ホテル・旅館が部屋が余りそうな場合、OTAに安値で流すことも多いため、同じホテルをとるならOTAが良いと思っている人も多いと思います。

 一般的OTAが扱うホテルは、大手旅行会社が扱うホテルも取り扱っていますが、そうでないところもたくさんあります。言い方は悪いですが、玉石混交で大量の宿泊施設を扱っているとも言い換えることができます。そこでは、全てがデータベースになっており、ホスピタリティに関してはお客様の評価がその基準となります。これらのデータを総合的に判断して、良いか悪いかを判断するのはお客様自身になります。

 OTAを使って安いプランを探すのは簡単です。ただ、実際に宿泊してみて値段に見合った満足が得られるかどうかは別問題です。特にホスピタリティに関しては、データや過去の利用者の評価だけで判断できるものではありません。

 当サイトでは、おすすめのホテル・旅館を紹介することもありますが、千円2千円程度の違いであれば、大手旅行会社のシステムで紹介することが多くなると思います。それは私自身が、大手旅行会社のプランの方が安心して勧められるからです。しかし、実際はOTAでも良いプラン、お買い得なプランがたくさんあるのも事実です。そういったものも探し出し、推薦できれば良いとも思っています。

 

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