観光地でも繁華街でもない一見すると謎立地の理由は?
2020年首都圏で、東武ホテルグループのホテルが3軒、立て続けに開業しました。2020年6月にオープンした埼玉県和光市の和光市東武ホテル、埼玉県川越市の川越東武ホテル、10月にオープンした東京都台東区浅草に浅草東武ホテルです。2020年という時期については、不運というという他にありません。計画段階では2020年の開業当年がコロナ禍に重なろうとは誰もが予想できませんでした。2019年に埼玉県飯能市にムーミンバレーパークや秩父市のジオグラビティーパーク秩父が開業、2020年には所沢市にところざわサクラタウンなど観光施設の開業ラッシュでした。2020年は何より、当初東京オリンピック開催予定の年でしたので、首都圏各域でホテルの建築ラッシュも続いていたのです。東武グループの規模から言って、この3軒のホテルへの投資は、当然のものでした。
興味を引くのは、東武の三軒のホテルの立地です。浅草と川越は関東屈指の観光地ですから誰もが納得する立地です。和光市については、首をかしげる人も多いのではないでしょうか。全国的な知名度も無く、埼玉県の中でさえ全く観光地とはいいがたい土地です。東京へのアクセスが良いことからビジネスユースを狙ったと言えなくもありませんが、それだけではありません。実は和光市は埼玉旅行ということを考えると非常に都合の良い立地にあります。
名称:和光市東武ホテル(わこうしとうぶほてる)
住所:埼玉県和光市本町4-7
客室数:158室
最寄駅:東武東上線・有楽町線・副都心線「和光駅」直結
チェックイン:14:00
チェックアウト:11:00
クレジットカード決済:visa・master・JCB・アメックス・UC・ダイナース・東武カード
有線LAN・wifi全室完備
朝食レストラン:3F さち福やcafe 6:00-10:00 70席
4Fロビー・フロント 4F~7F 客室
東武ホテルが和光市を選んだ意味
和光市東武ホテルと直結する小さな「和光市駅」の利便性
和光市駅は東武東上線の主要駅かつ有楽町線・副都心線のターミナル駅
必ずしも大きな駅が利便性が高いとは限りません。むしろコンパクトにまとまった小さな駅ほど便利なものはありません。短時間で外に出られ、駅内で迷うこともありません。心配なのは停車する電車が少ないことですが、駅としての規模は小さいながらも、和光市駅はこのエリアを走る鉄道の、ほとんど全ての電車が停車する、中心駅といってよい存在です。
まず和光市駅は東武東上線の主要駅であり、更に地下鉄有楽町線・地下鉄副都心線の始発駅です。東武東上線については他の記事もで繰り返し紹介してますので、説明も不要でしょう。埼玉旅行の2大起点の片方である池袋駅と埼玉旅行の主要観光地川越をつなぐ東武鉄道の路線です。東武東上線終点の寄居駅からは秩父鉄道に乗り換えることもできます。和光市駅は東武東上線の駅の中で、池袋の次に快速急行の停まる最初の主要駅です。
地下鉄有楽町線と地下鉄副都心線については、和光市駅が終点で他の埼玉県の駅とは繋がってませんので、埼玉旅行に使うことはできません。地下鉄有楽町線は有楽町駅、地下鉄副都心線は新宿三丁目駅という重要な駅から、それぞれ乗り換え無しで和光市まで来れるということは非常にメリットがあります。なぜこの2つの駅が重要かということを簡単に説明したいと思います。
羽田空港から埼玉旅行に向かう方法として、モノレールで浜松町駅に行き、JR山手線内回りで池袋まで向かうコースをすでに紹介しましたが、JR浜松町駅からJR山手線に乗ると、2つ目の駅がJR有楽町駅です。JR有楽町駅は更に東北・北陸・上越・東海道など各新幹線の起点駅であるJR東京駅の隣の駅でもあります。つまり、在来線のJR山手線とJR京浜東北線は・東京駅・有楽町駅・新橋駅・浜松町駅の順に並んでいるため、新幹線で来るにしても、飛行機で羽田空港を使うにしても、有楽町駅は簡単に行けるということです。そのJR有楽町駅から地下鉄有楽町線に乗り換えると、その後和光市までは乗り換えなしの一本で到着します。
次に地下鉄副都心線です。副都心とは、東京都の中心を都心と考えた場合、それに次ぐ中核地域という意味です。具体的には池袋・新宿・渋谷が東京の副都心と呼ばれています。その3つの副都心をつなぐのが、2008年に開通した地下鉄副都心線です。池袋は埼玉旅行の拠点として既に挙げてますから言うまでもありませんが、新宿は埼玉旅行においても非常に重要な場所になります。
新宿駅はJR中央線の特急の停車駅で、小田急線・京王線など西からの鉄道が集まっています。他県からの埼玉旅行ということを考慮に入れた場合、それ以上に注目すべき点は、新宿は高速バスの日本最大のターミナルであるということです。もともと新宿駅周辺には多くのバスターミナルがありましたが、それを2016年、新宿のバスタ新宿という巨大バスターミナルビルに集結しました。バスタ新宿の登場によって利便性も高まり、日本全土の高速バスのハブの役割、つまり地方からきた高速バスを新宿で乗り換え、他の地方に行くという役割さえ担うようになりました。高速バスを使えば、日本各地から低料金で新宿まで来ることができます。
残念ながらバスタ新宿は新宿駅南口に隣接しており、副都心線の新宿三丁目駅とは少し距離があります。埼玉旅行に直接アクセスするなら、池袋駅行や大宮行のバスを探した方が便利でしょう。ただ新宿駅のバスは圧倒的に数が多いため、常に選択肢の一つとして出てくると思います。バスタ新宿でバスを降り、新宿南口から西口を散策がてら、新宿三丁目駅付近に来た場合は、副都心線で和光市まで行くルートもあるという程度にとらえて下さい。
これらの2つの地下鉄はいずれも池袋駅を通りますが、池袋駅では改札・ホームは別になります。有楽町線池袋駅はJR南改札を出た南通路にあるのに対し、副都心線池袋駅は中央通路の外れにあります。つまり池袋駅には有楽町線、副都心線、東武東上線それぞれに駅があり、どれに乗っても和光市に行くことができるということです。
有楽町線と副都心線は、池袋の次の要町駅以降は同じ駅を辿りますが、東武東上線は平行する別の駅をたどりますが、最終的に和光市駅でようやく一つの駅にまとまります。和光市東武ホテルは、その全ての路線が一体化した和光市駅直結のホテルです。池袋でも大宮でも駅直結のホテルはありません。
和光市から埼玉旅行に行くには、東武東上線を使うことになります。当然ながら、池袋を出発点にするよりも短時間で、川越にも寄居にも行くことができます。和光市を起点とした場合、覚えておきたい点がもう一つあります。和光市から普通・準急で2駅目先、急行・快速で次の駅が朝霞台駅といいます。東武東上線朝霞台駅はJR武蔵野線の北朝霞駅の乗り換え駅です。駅舎は別ですが、すぐ目の前にありますので、短時間で乗り換えができます。JR武蔵野線は西武池袋線・東武東上線・埼京線・京浜東北線などを環状に繋ぐ貴重な路線です。上手く使えば、和光市を拠点に埼玉の様々なエリアに移動できます。更に言えば、東京都国分寺市や千葉県松戸市の方まで足を延ばすこともできます。
和光市東武ホテルの最も見逃せないポイント
和光市東武ホテルは鉄道駅直結の上、首都圏の最重要高速道路「外環自動車道」のICすぐ側
前節では、鉄道交通の面で、和光市駅の利便性をお伝えしました。駅直結の和光市東武ホテルは、鉄道での移動に便利なホテルであることは言うまでもありません。しかし埼玉旅行で交通を考えた場合、それ以上に特筆すべき利便性があります。
まず、和光市駅、すなわち和光市東武ホテルから徒歩2分のところにニッポンレンタカー(営業時間7時から21時)があります。そして徒歩3分のところにはトヨタレンタリース(営業時間8時から20時)があります。レンタカー利用者にとっても申し分ありません。
どちらのレンタカーも、高速ICへ数分の場所にあります。その高速道路は東京外環自動車道で、広範囲の埼玉旅行をする場合には最も便利な高速道路です。東京外環自動車道は関越自動車道、首都高埼玉大宮線、東北自動車道といった埼玉旅行の各エリアへの高速道路と連結しています。とりわけ関越自動車道は利用価値が高く、長瀞エリアの入り口である、埼玉県深谷市の花園インターチェンジがある他、奇勝「吉見百穴」や
国営武蔵丘陵森林公園といった、埼玉県を代表する観光地でありながら公共交通機関では移動しずらい場所へのアクセスが容易です。
和光市に拠点を置き、そこからレンタカーで移動するという方法は、運転できる人にとっては、最も簡単な埼玉旅行の方法です。埼玉県の代表的な観光地の多くは十分すぎるほどに大きな駐車場が完備されています。レンタカーのカーナビに観光地を入力するだけで、難なく日帰り観光できるでしょう。
以上のことを総合すると、東武ホテルがなぜ、川越・浅草と並んで和光市を選択したかが見えてくると思います。和光市のメリットをおさらいしておきます。
1.新幹線東京駅・羽田空港の双方からアクセスの良い有楽町と連結。
2.日本最大の高速バスターミナル新宿とも連結。
3.和光市駅は東武東上線の主要駅で川越、寄居方面のアクセスに便利。
4.朝霞台から武蔵野線での移動もしやすい。
5.東京外環自動車道のインターチェンジが近い。
これらは全て、埼玉旅行にも関連することです。
次に和光市東武ホテルを埼玉旅行の拠点として選んだ場合の、デメリットとメリットを挙げておきます。
まずデメリットは
1.近隣に観光スポットが少ない。
2.スナックやバーなどが少ない。
3.駅入り口とホテル入り口は別ですが、通勤ラッシュ時にはホテル入り口前も人通りが多くなる。
次にメリットは
1.駅直結のため鉄道での移動が容易。
2.レンタカーが近い。
3.2020年にできたばかりホテルのため、設備が新しく清潔。大画面スマートテレビ、最新の自動換気システム、wifi、有線LAN、USB充電ポートが全室完備。
4.シングルルーム、ダブル、ユニバーサルダブル、コンフォートダブル、ツインの5種類の部屋が用意されている。
5.ホテルレストランの他、周辺にファミレス、ファーストフード、飲食店などは多く、近くに10時から22時まで営業の大型スーパーがあるため日常生活に不便はない。
以上のことをまとめますと、和光市東武ホテルは近隣の観光や、散策する面白みには欠けますが、埼玉旅行の拠点としては、ホテル設備、交通面など盤石の体制であるということです。
東武グループの破格のフリープラン
この関西・西日本からのフリープラン(新幹線+ホテル)は東武系旅行会社が狙い目
和光市東武ホテルは、埼玉旅行の拠点としては前述の通り、非常に優れた立地条件を兼ね備えていますが、東武グループにとってはコロナ禍によって当てが外れたのは間違いありません。ただ消費者にとっては、それは狙いどころでもあります。
東武グループの旅行会社は「東武トップツアーズ」といいます。東武トップツアーズは1956年設立の老舗の旅行会社です。国内旅行取扱総額でみると、JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行がトップ3ですが、その次に来るのが東武トップツアーズ、JALパック、HIS、ANA-X、阪急交通社などの第二グループです。この辺は毎年入れ替わっていますが、2021年度で見ると、東武トップツアーズは第7位ということになります。
東武トップツアーズは東武グループですから、当然東武鉄道や、東武グループのホテル、観光地を利用したツアーに強いのですが、埼玉旅行に関連してみると、今一番目に付くのが、西日本各地からの東海道・山陽新幹線と和光市東武ホテルを利用したフリープランです。
フリープランというのは、交通手段とホテルだけを旅行会社が用意し、あとは旅行者がご自由にどうぞ、というスタイルのツアーです。現在ほとんどの大手旅行会社の国内ツアーは、このフリープランが主流です。
東武トップツアーのこのフリープランを簡単に紹介しますと、出発駅は豊橋・名古屋・岐阜羽島・米原・京都・新大阪・新神戸・西明石・姫路・岡山・新倉敷・福山・新尾道・三原・東広島・広島・新岩国・徳山・新山口・厚狭・新下関の22か所の新幹線駅の他、大垣・多治見・津・桑名・福知山・和歌山・紀伊田辺といった東海・関西地方のJR主要駅も選択可能です。到着駅は新幹線東京駅で、そこから和光市東武ホテルまでは旅行客負担で各自移動することになります。
例えば2022年9月29日の広島発1名1室食事なしプランで調べてみますと、34,800円です。広島-東京間を通常期に新幹線で普通に往復すると、それだけで38,880円かかります。東武トップツアーの場合、和光市東武ホテルのダブルルームの1名利用宿泊がついて34,800円ですからいかに安いかがわかります。
今度は同一日の名古屋発で2名一室ツインルームを調べると、1名あたり23,000円、2名合計46,000円です。名古屋-東京通常期新幹線往復で1名22,600円です。近距離の場合、新幹線部分がそれほど値引きできなくなるものですが、それでもこれだけの価格を維持しています。ということは、このフリープランにおいて、和光市東武ホテルは、ほとんど投げ売り状態だということです。