旅行にふさわしい博物館とは
旅行コースに入れるなら各地の県立博物館
日本各地のいたる所に博物館があります。国立の博物館をはじめ、各都道府県立の博物館、市町村立の博物館をはじめ、企業や大学等付属の博物館や、各民間団体などが設立した小規模な博物館なども含むと膨大な数にのぼります。文化庁の調査によると、登録博物館は平成30年10月現在で、914館というデータがあります。しかし、これ以外に登録外の博物館や、博物館類似施設というのが無数にあります。「博物館探訪」というウェブサイトの作者が集計したデータによると日本には9500か所もの博物館があり、これでもまだ途中集計というのですから、とてつもない数です。
しかし、これらの中で旅行の目的地となりうる博物館はどれほどあるでしょうか。旅行の日程に博物館を組み入れるということは、それに充足する時間の分だけ、他の観光地を巡る機会を奪われるということになります。他の観光地に匹敵するだけの満足度を得ることができるかと考えた場合、博物館の大半は難しいと言わざるをえません。多くの観光地や観光施設は旅行者の満足が第一の目的ですが、博物館は必ずしもそうではありません。多くの博物館では、その土地の出土物や重要資料などを展示することが優先されているのが実情です。そもそも博物館というのは、その土地の歴史から、動植物、地質、文化など幅広い分野を展示するものですので、展示物を満遍なく興味が持てる人は稀でしょう。展示方法にエンターテイメント性を取り入れ工夫している博物館も少なからずあるのですが、市町村レベルの博物館では、予算的に限界があると思います。
首都圏の県立博物館
東京国立博物館は博物館としての最高峰だが、旅行コースの1要素しては巨大すぎる
旅行の日程に博物館を組み入れるとしたら、都道府県立または国立レベルの博物館であれば、失敗のリスクは減少します。ただし、大きければ良いというものでもなく、例えば上野の東京国立博物館のように巨大で、展示点数が膨大な博物館の場合、もちろん見どころも多いのですが、全てじっくりと見た場合、丸一日かけても足りません。数泊の旅行日程に東京国立博物館を組み入れるとなると、どうしても全体的にアンバランスな旅行になってしまいます。
両国の江戸東京博物館は、江戸町内のジオラマなど来館者が楽しめる展示が多く、旅行者に人気の施設ですが、2022年から2025年まで改装のため休館中です。この施設は江戸時代から明治大正までの東京というテーマが中心になっており、ある意味誰もが楽しめるのですが、江戸時代・明治・大正の東京というのは最も情報過多の部分でもあり、多くの出版物、メディア、あるいは時代劇などで取り上げすぎていて、目新しさにかける部分もあります。
東京の博物館では、以上の2つの博物館はもっともおすすめですが、旅行の要素として考えた場合、何かが足りない感が拭えません。東京国立博物館のある上野公園周辺は、東京有数の緑地帯であり、園内に動物園、美術館などが集中しており、またアメ横商店街も近くここだけで旅行が完結するほどに効率的な場所といえます。江戸東京博物館は隣には両国国技館があり、北斎美術館が近くにあります。上野・両国あるいは浅草・秋葉原・スカイツリーといった東京東部の観光地は、それぞれ距離にすると2kmほどで、歩いても行ける距離にあります。それぞれ優秀なコンテンツを持っていますが、その繋ぎの部分が変哲のない雑居ビル群に囲まれているというのが残念なところです。旅行というのは点と点だけでは成り立たず、点から点へ移動する線も旅行の重要な要素であることを考えると、東京の旅行はどうしても分断されている印象を受けます。観光地から次の観光地まで流れるような旅行が理想とすると、やはり東京は除外すべきなのかもしれません。一つの観光地から移動するたびに現実に引き戻されるようでは、理想の旅行コースとは言い難いのです。
県立レベル以上の博物館の数でいうと突出しているのが千葉県で、次いで埼玉県になります。千葉県では千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館が筆頭に挙げられます。近年LCC網の発達で、成田空港経由で関東旅行へ来る人も増えています。見落とされがちですが、成田空港から鉄道を使うにしろ、レンタカーを借りるにしろ佐倉は東京方面への途中にあり、武家屋敷などの見どころも多く、ぜひ訪れてほしい場所です。その他千葉県には6件の県立博物館があり、さらに千葉県中央博物館には海の博物館といった分館もあります。また博物館のあるロケーションも良く、博物館を中心とした旅行も可能でしょう。
埼玉県の5つの県立博物館
個性的で旅行に丁度よいスケールの5つの博物館
さて埼玉県について話を進めましょう。埼玉県は県立博物館が5件あり、これは全国で千葉県に次いで2番目の数です。埼玉県の県立博物館は5件それぞれに特色があります。
埼玉県立歴史と民族の博物館
大宮の「埼玉県立歴史と民族の博物館」は武蔵国一之宮である氷川神社に接する大宮公園内にある歴史博物館です。室内の全体照明を暗めに落として、スポットライトなどで効果的に演出されているのが特徴です。時代ごとに分かれたエリアそれぞれに、専門のボランティアガイドが配置されています。県外から旅行でくる場合、大宮は拠点となる駅です。新幹線駅でもあり、駅周辺にはホテルも充実しています。また県内の他の地区へ移動する場合、最も交通の便が良い場所です。この大宮を拠点とする場合、歴史と民族の博物館は、アクセス面、博物館の規模、展示内容ともに第一候補になる博物館です。大宮駅東口から直結するアーバンパークライン(東武野田線)で2駅の大宮公園駅がこの博物館の最寄駅です。大宮公園駅から徒歩5分ほどで歴史と民族の博物館に到着します。歴史と民族の博物館は大宮公園内にあり、大宮公園は氷川神社と接しています。氷川神社の参道は大宮駅付近まで続いており、これらを繋げば、都市の喧騒を全く感じさせないウォーキングコースが出来上がります。
名称:埼玉県立歴史と民族の博物館
住所:埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4-219
最寄駅:東武アーバンパークライン 大宮公園駅(徒歩5分)
料金:常設展 一般300円 高校生・学生150円 中学生以下無料
企画展 一般400円 高校生・学生200円 中学生以下無料
特別展 一般600円 高校生・学生300円 中学生以下無料
定休日:月曜日・12/29~1/1 ※令和5年秋まで改修工事のため休館中
営業時間:9:00~16:30(受付16:00まで)
埼玉県立さきたま史跡の博物館
埼玉県行田市にある「埼玉県立さきたま史跡の博物館」はさきたま古墳公園内にある施設で、県立博物館としては極めて規模の小さな部類に入るでしょう。さきたま古墳公園は行田市で発掘された9つの古墳、いわゆる「さきたま古墳群」を公園化したもので、これらの古墳は関西にある世界遺産の「百舌鳥古市古墳群」などに比べると小規模です。また古墳は隣県の群馬県などにも多数あるため、わざわざ埼玉県にでむいて古墳を見ることの意義を感じずらい人もいるでしょう。しかし、ここでは唯一無二の重要発掘物を見ることができます。それが、この古墳から発掘され、この「埼玉県立さきたま史跡の博物館」展示されている国宝「金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)」です。この鉄剣については改めてページを割く必要があります。行田市は埼玉県北東部に位置します。埼玉旅行の旅行スポットはどうしても県西部にかたよりがちです。当サイトで紹介しているスポットも秩父・長瀞のある県西部が中心です。そうした中、行田市は県北東部有数の観光地を多数有しています。そうした県北東部の観光地とさきたま史跡の博物館を組み合わせることにより、他の埼玉旅行とは全く異なるプランを立てることができます。
名称:埼玉県立さきたま史跡の博物館
住所:埼玉県行田市埼玉4834
最寄駅:バス停「埼玉古墳公園」(JR行田駅からバス)
料金:一般200円 高校生・学生100円 中学生以下無料
定休日:月曜日・12/29~1/3
営業時間:9:00~16:30(受付16:00まで)
埼玉県立嵐山史跡の博物館
続いて「埼玉県立嵐山史跡の博物館」です。この博物館は歴史博物館ですが、中世の武士に特化した特殊な博物館です。中世とは鎌倉時代から戦国時代までを指しますが、この時代の埼玉県の歴史は全国的にはほとんど無名といって良いでしょう。鎌倉幕府の御家人として名前が挙がるぐらいです。埼玉県は縄文時代から続く長い歴史がありますが、大和時代、それこそ先に述べた金錯銘鉄剣が作られた時代に大和政権に編入されて以来、日本史の表舞台にほとんど姿を現しません。しかし実際は、表舞台以上に興味深い物語が繰り広げられてきた地域でした。大化の改新以降、埼玉県は武蔵国に編入され、中央の機関は東京都の府中市に置かれましたが、埼玉県の豪族は力を保ち続けました。それらの豪族は屈強な東国武士として鎌倉幕府に協力し、有力な御家人となりました。室町時代には関東管領上杉氏、古河公方、後北条氏などの一連の駆け引きの台風の目のような場所だったのです。一般には知られていない日本史のこれらの裏ストーリーにアクセスできるのが埼玉旅行の魅力の一つです。
名称:埼玉県立嵐山史跡の博物館(さいたまけんりつ らんざんしせきのはくぶつかん)
住所:埼玉県比企郡嵐山町大字菅谷757
最寄駅:東武東上線 武蔵嵐山駅(徒歩15分)
料金:一般200円 高校生・学生100円 中学生以下無料
定休日:月曜日・12/29~1/3
営業時間:9:00~16:30(受付16:00まで)
埼玉県立自然の博物館
次に秩父郡長瀞町にある「埼玉県立自然の博物館」は上記3つの博物館が歴史に特化した分、地質、自然に関する面を一手に引き受けた博物館です。長瀞旅行の中心駅である長瀞駅の隣の上長瀞駅のすぐ近くにあります。長瀞は埼玉県において、位置的にも交通的にも辺境にあたります。このような場所に県立の博物館を設置したのには理由があります。それはこの地が日本地質学発祥の地だからです。秩父・長瀞地域は日本ジオパークにも指定されているとおり、日本の地質学において最重要地帯といっても良いエリアです。そしてここには旅行客の視点で見ても外せないものがあります。それがパレオパラドキシアです。パレオパラドキシアは世界の絶滅動物の中でも、もっとも注目すべき動物の一つと目されています。哺乳類の骨格はいつくかの種に分類されますが、このパレオパラドキシアのみは骨格の構造は他のどの哺乳類とも極端に構造が異なります。日本の平野部が海底になっていた時代、現在の秩父・長瀞が丁度海岸線の高さにあたり、古秩父湾と呼ばれていました。古秩父湾は水陸両棲のパレオパラドキシアにとっての楽園であった可能性があります。秩父・長瀞エリアから計6体のパレオパラドキシアの化石が発掘され、世界で最もパレオパラドキシアが集中して生息していたエリアではないかと推測されています。
名称:埼玉県立自然の博物館
住所:埼玉県秩父郡長瀞町長瀞1417-1
最寄駅:秩父鉄道 上長瀞駅(徒歩5分)
料金:一般200円 高校生・学生100円 中学生以下無料
定休日:月曜日・12/29~1/3
営業時間:9:00~16:30(受付16:00まで)
埼玉県立 川の博物館
そして5つ目が「埼玉県立 川の博物館」です。この博物館のある寄居町は長瀞エリアの入り口にあたります。長瀞エリアへの旅行であれば、上長瀞にある自然の博物館とともに当然視野に入ってくる博物館です。それだけではなく、川の博物館は、そのユニークさにおいても上記に挙げた博物館をはるかに上回っています。博物館を旅行に組み入れる場合、その展示内容に興味があることが前提となりますが、この川の博物館に限って言えば、展示内容関係なしに楽しめるといってもいいかもしれません。他の4つの埼玉県の県立博物館と比較しても、最も旅行向きの博物館といえます。この博物館にはまず、三つの日本一があり、その他に3Dシアター、ウォーターアスレチックといった子供も楽しめる施設があります。そして、展示室自体が一般的な展示室の展示方法と全く異なっています。展示内容についても、埼玉県の文化の独自性を決定づける、いくつかの展示物がそろっています。
埼玉県立「川の博物館」埼玉旅行に博物館を組み入れるとしたら、これらの5つの県立博物館は真っ先に検討するべきところです。
埼玉県の市立博物館等について
市町村の博物館・資料館は当たりはずれが大きい
・その他の旅行スポットと関連付けて利用するべき。
埼玉県に限らず、市立博物館や町村立の博物館・資料館などは無数にあります。これらを無作為に旅行コースに組み入れるわけにはいきません。しかし、それらの中に興味深い展示物が多数存在することも事実です。人によって興味のポイントも違いますから、私がここで何かをおすすめしたところで、皆様の琴線に触れるものであるという自信は持てませんし、行ったことの無い博物館が大半です。ただ、比較的無難なのは、観光地にある博物館です。観光地にある博物館であれば、移動時間が節約でき、博物館で知識を得ることによって、旅行の楽しみが増すことは間違いないでしょう。
埼玉県であれば旅行スポットと博物館のセットは次の3組になります。川越市立博物館は川越本丸御殿のすぐ目の前にあり、川越旅行の第2の中心地といえます。展示内容は川越観光の観光案内ということもできます。川越のような城下町の場合、旅行スポットを巡る上で、歴史的な背景を知ることは必須ともいえます。
長瀞町郷土資料館は規模が小さく、単独では旅行スポットにはなり得ませんが、ここはまず、長瀞岩畳と宝登山神社、宝登山ロープウェイをつなぐ宝登山参道の途中にあります。本館隣の「旧新井家住宅」それ自体が国指定重要文化財で、板葺石置屋根農家住宅としては唯一現存するものです。規模が小さいということは短時間で見学できるというメリットもあります。近隣の宝登山神社、長瀞トリックアートを含め、これらをひとまとまりの旅行スポットとみなせば、十分に満足できるボリュームになります。
忍城は再整備され、埼玉県で唯一本来の姿に近い景観を取り戻した城跡です。埼玉県の城は多数ありましたが、江戸時代に次々と廃止され最終的には、川越城・忍城・岩槻城の3つになりました。先に挙げた川越は、城跡はほとんど残っていず、城下町の一部が再建されました。忍城は反対に、城は再建され城下町は残っていないという例になります。埼玉県内には城跡はたくさん残っていますが、天守部分が再建されたのは忍城のみです。江戸時代より関東の城は天守閣という名称は使われず、御三階櫓などと呼ばれていました。この天守にあたる再建された御三階櫓の横の建物が行田市郷土博物館です。旅行コースに忍城を入れるのであれば、行田市郷土博物館はワンセットになります。
この3つの市立博物館に加え、もう一つ付け加えるならば、狭山市立博物館を挙げておきます。狭山市立博物館は池袋から秩父へ向かう西武池袋線稲荷山公園駅にあります。この駅周辺は観光地とはいいがたいものの、池袋からムーミンバレーパークや秩父方面に向かう途中であり、狭山市立博物館は稲荷山公園駅から徒歩3分の近さです。日本固有種と呼ばれるアケボノゾウの骨格標本が看板展示物ですが、それよりも興味深いものがあります。明治時代のほんの短い期間だけですが、馬車鉄道というものがこの地で営業されていました。それは蒸気機関車が既に登場した後の時代です。しかも蒸気機関車の乗客を取り込もうと目論んでいたというから驚きです。馬の運動能力を考えれば、軽い客車を摩擦の少ない鉄道でけん引することによって、かなりのスピードは出そうに思います。しかし自分の意思を持つ動物が、決まったレールの上をきっちりと走れるものなのでしょうか。この博物館にある馬車鉄道の現物大の模型は、実際に使われたものにかなり近いと言われています。この馬車鉄道模型を見るためだけでも、訪れる価値はあると思います。
埼玉県の民間の博物館について
旅行コースの主役にもなりうる別格の2つの民間博物館
民間の博物館ということであれば、埼玉県さいたま市大宮区にある鉄道博物館が規模・内容の充実度において別格です。テーマである「鉄道」自体が旅行に大きく関わっており、鉄道で旅する旅行者であれば必見の博物館といえます。鉄道博物館はJR東日本の運営する民間博物館で2006年にオープンしました。その以前に、東京秋葉原の万世橋付近に交通博物館という施設がありましたが、ここの展示物を丸ごと移設し、大宮に持って行きました。JR東日本が最も営業上重視しているのが、関東から東北、北陸、新潟、長野への旅行です。要するに自社エリアの新幹線を使ってもらいたいのです。関東のJR各駅に来ればそのことは一目瞭然です。至る所に東北・北陸・長野・新潟の旅行パンフレットやポスターを目にします。これらの新幹線の結集する駅がJR大宮駅です。
鉄道博物館に行くにはJR大宮駅でニューシャトルという路線に乗り換え1駅です。大宮駅周辺は既に開発されつくされ博物館を建てる土地は無かったのでしょうが、多数の路線の中からあえて最もマイナーな地方路線ニューシャトルを選んだかが気になるところです。鉄道博物館はニューシャトル沿線に作らなければならない理由がありました。実はニューシャトルは大宮以北では東北新幹線、北陸上越新幹線と並行して走る唯一の在来線で、博物館をニューシャトル沿線に置くことで、博物館から東北・北陸上越新幹線全ての列車を観察できるのです。博物館来館者が新幹線に興味を持てば、続いて実際にその新幹線に乗ってみたくなるはず、と予想できます。それこそがJR東日本の狙いでしょう。もちろん鉄道博物館は新幹線だけではなく、鉄道に関するあらゆるテーマをカバーしてます。純粋な車両展示や歴史資料などの博物館部分だけでもかなりのボリュームがありますが、シュミレーターや子供向け教育コーナーなど体験型施設も相当なボリュームです。鉄道博物館の延床面積は28200平方メートルですから、全国の県立博物館で最大の琵琶湖博物館さえ上回っています。
埼玉大宮の鉄道博物館埼玉県の民間博物館として、次に来るのは埼玉県所沢市の角川武蔵野ミュージアムです。角川武蔵野ミュージアムは2020年オープンした最新の博物館ですが、これほど概要を捉えずらい博物館は他に類をみません。強いて言うなら「本」をテーマにした博物館と言えるかもしれません。
角川武蔵野ミュージアムで最も注目すべき点は、松岡正剛氏を初代館長として迎え入れた点でしょう。松岡氏は雑誌編集者でもあり、数々の著作を残す著述家ですが、哲学、歴史、科学、文学、日本文化、芸術からサブカルチャーまで、あらゆる事象に精通した「知の巨人」として知られています。
もう一つの注目点は角川武蔵野ミュージアムの建物自体です。有名建築家隈研吾氏が自らがデザインした渾身の建築物です。コンセプトは大地から隆起した岩のような建築物ということですが、岩とかたづけるにはあまりに巨大です。巨大な岩といえば、奥秩父連峰の主峰、金峰山の五丈岩が有名です。金峰山は2595mの高峰ですが、ふもとの甲府盆地のいたるところで、その山頂の岩を視認できるほど大きな岩です。
上の写真の赤い点が、この五丈岩に登ろうとしている人ですから、スケール感がわかると思います。この五丈岩が15メートルですが、角川武蔵野ミュージアムはその倍の30mの高さがあります。切れ目なしの一粒岩で30メートルですから、近くで見ると相当の迫力です。
この巨岩のような建物の内部は5階建てになっており、各階さまざまな趣向がこらしてありますが、中核部分は松岡正剛氏自身がプロデュースしたエディットタウンと本棚劇場です。この中核部分に展示してあるのは2万5000冊の本で、これらを手に取って読むこともできます。この説明では図書館や書店に過ぎないようですが、デザイン、本の内容ともに図書館や書店とは全く違います。