九州・四国・中国地方から埼玉旅行に行く場合、交通手段の第一候補は飛行機です。中国地方でも山陽新幹線ルート上の都市からであれば、新幹線という手段も使えなくはありません。東に近づくにつれ、新幹線の有効性も高くなります。飛行機は出発空港・到着空港での移動や手続きに時間がかかり、離陸してしまえば短時間で目的地に着きます。新幹線は簡単に乗車できるものの、スピードでは飛行機よりはるかに劣ります。空港や駅でのロスタイムを含んだトータル時間を考えると、短距離では新幹線有利、長距離では飛行機が有利というセオリーが成り立ちます。
ではもう少し埼玉に近づき、大阪で見てみましょう。このページでは便宜上、大阪の範囲を広くとらえ、関西3空港、つまり伊丹空港(大阪空港)、神戸空港、関西空港のエリアをまとめて大阪と呼ぶことにします。これら三空港から関東の羽田空港または成田空港までの飛行機での搭乗時間はおよそ1時間半程度です。新大阪から東京までの新幹線は約2時間半ですから、やはり飛行機が早いのですが、出発空港でのロスタイムや、羽田空港から埼玉旅行の拠点である池袋や大宮への移動時間を考慮すると微妙なところです。もしかすると僅差で新幹線の方が早いかもしれません。居住地から出発空港や新幹線駅までの移動時間もありますから、一概にどちらが早いとは言えません。逆に言えば、大阪エリアの居住者は新幹線を使おうが、飛行機を使おうが大差がないということができます。
近畿地方より東、つまり中部地方以東に目を向けると、名古屋のセントレア空港、小牧空港や長野県の信州松本空港、静岡県の静岡空港などがあります。しかしそもそもこのエリアから成田・羽田への便はほとんどないため、必然的に陸路を使い埼玉へ旅行することになります。
北陸地方には北陸3空港(富山・小松・能登)があり、この地方から東京へのルートの場合、飛行機と新幹線の競合エリアです。しかし北陸地方から埼玉旅行を考えた場合、北陸新幹線には埼玉旅行の拠点、大宮駅に直接アクセスできるという強みを持っており、あえて羽田空港まで飛行機で行き、埼玉県へと戻るメリットがほとんど見出せません。
大雑把にいうと、埼玉旅行のための交通手段は、次のように分かれます。中国・四国・九州地方からの埼玉旅行は飛行機の利用、中部・東海・北陸地方は新幹線など陸路の利用が望ましいということになり、その中間の大阪エリアがどちらも選べる分水嶺ということになります。
近畿地方ではなく、大阪エリアとしたのは、近畿地方でも京都や滋賀の場合、飛行機を使うには埼玉と逆方向の大阪に戻ることになるためロスが大きく、新幹線の方が早いからです。
選択肢が多すぎて旅行プラン作成の難易度が高い
交通手段の選び方は時間だけではありません。埼玉での宿泊先や旅行ルートによっても違ってきますし、交通機関の運賃も当然検討しなければなりません。まず新大阪東京間の東海道新幹線は最も本数の多い新幹線であり、「のぞみ」「ひかり」「こだま」の三種の列車が数分刻みで往復しています。飛行機については、出発空港の伊丹・関空・神戸の三空港と到着空港の成田・羽田の2空港の組み合わせ方、ANA、JAL、スカイマークやLCCなどの選び方の問題もあります。新幹線の他、特急などの在来線で行くこともできますし、高速バスも多種多様です。これだけ交通手段が多いと、旅行プラン作成の難易度が高いとも言えますし、旅行プランを立てる楽しみが大きいということもできます。
大阪から飛行機での埼玉旅行へのアクセス
ここでいう大阪というのはもちろん大阪府も含まれますが、伊丹空港(大阪空港)、関西空港、神戸空港の三空港の利用者という意味で使っています。伊丹空港(大阪空港)は大阪府と兵庫県の境界線、神戸空港は完全に兵庫県県、関西空港は大阪府と和歌山県の境界線にありますから、これらの3府県に京都府、奈良県、滋賀県の人も居住地によっては利用者に含まれます。
居住地に近い空港を利用するのが必ずしも最善とは限りません。各空港ごとに就航する航空会社の組み合わせが異なり、航空会社によって料金体系も違います。同一航空会社の同一路線であっても料金自体は季節や航空チケットの種別によって料金はまちまちですから、航空会社によって高い安いを単純に比較することはできません。まずは各路線の特徴を把握しておく必要があります。
1.伊丹空港(大阪空港)-羽田空港から埼玉旅行
JALとANAの2社のみ運航、空港へアクセスしやすく便数も多い
伊丹空港(大阪国際空港)は古くは近畿圏唯一の空港で、当時はJAL、ANA、JAS(現在はJALに統合)の三社しかありませんでした。伊丹空港は1994年関西空港が開業してから、国内線メインの空港になったという経緯があります。そのような経緯から、現在においても伊丹-羽田のフライトスケジュールはJAL・ANAの2社で埋まっており、他社の参入する余地はありません。そのため、航空会社の選択肢が少ないというのがこの路線のデメリットです。
まず伊丹空港を使うメリットとしてアクセスのしやすさが挙げられます。もちろん居住地によってアクセスのしやすさは違いますが、所要時間を比較すると、この関西三空港のエリアのどこからでも伊丹空港は比較的短時間でアクセスできます。それは関西空港と神戸空港は海上にあるのに対し、伊丹空港は陸地の人口密度の高い地域の中にあることと、伊丹空港自身がコンパクトにまとまっており、空港に入ってから搭乗までの時間が節約できることに起因します。
主要駅からのバス所要時間で比較してみます。
梅田 | なんば | 和歌山 | 京都 | 神戸三宮 | |
伊丹空港 | 30分 | 30分 | 120分 | 50分 | 40分 |
関西空港 | 70分 | 60分 | 40分 | 90分 | 80分 |
神戸空港 | 50分(電車) | 70分(電車) | - | 70分(電車) | 25分 |
大阪市の中心である梅田やなんばへは伊丹空港からの直行バスが最も早く、その他大阪市内各所への直行バスも充実しています。神戸空港は神戸市内以外の直行バスは少なく、ポートアイランド線で三宮に出てから、電車の移動が基本となります。伊丹空港へのアクセスは電車などでもそれほど時間がかかりませんから、広いエリアから短時間でアクセスできる空港といえます。
次に伊丹-羽田間のフライトスケジュールを確認します。
2023年4月現在の時刻表では、往路の始発便は7:05伊丹発ANA986便で、その次が7:10伊丹発JAL102便です。最終便は20:20伊丹発ANA40便、その前が20:15伊丹発のJAL138便で、始発から最終便までの間、7時台は4便、それ以外は一時間に2便あります。復路の羽田発伊丹は、6:25羽田発ANA985便、最終が19:15羽田発のANA41便です。基本的に羽田空港から出発した機体が、便名を変えて戻ってくるという流れですので、復路も往路と同数の便があります。ANA・JAL合わせると、片道あたりおよそ30分に1便のペースで飛んでいます。
例えば、始発のANA986便に搭乗すると、8:15頃に羽田空港に到着します。ANA便は羽田空港第2ターミナルに到着します。埼玉旅行の拠点となる池袋を目的地とすると、わかりやすいのは東京モノレールとJR山手線を使うルートです。羽田空港第二ターミナルビルの1階が到着ロビーで、地下1階にモノレールの駅があります。移動時間を余裕をもって計算し、9:01の浜松町行きにのると、9:30頃までには池袋に到着する計算です。朝の混雑を避けたい、ホテルのチェック時間に合わせたい、イベントの時間に合わせたいなどといった要望があれば、それにあわせて搭乗便をきめ細かく選ぶことができるのが、このルートの強みです。ちなみに、羽田空港から池袋までの上記のルートは別に詳細記事を作っていますので参照ください。
埼玉旅行アクセス情報その1:羽田空港からモノレールへ 埼玉旅行アクセス情報その2:モノレール浜松町駅からJR浜松町駅へ 埼玉旅行アクセス情報その3:JR浜松町駅からJR池袋駅へ 埼玉旅行アクセス情報その4:JR池袋駅から西武池袋線池袋駅へ2.伊丹空港(大阪空港)-成田空港から埼玉旅行
伊丹から成田のフライトはANA・JALとも1日1往復、計2往復のみです。
往路
ANA2178(伊丹 14:00- 羽田15:20)
JAL 3006 (伊丹14:35 -羽田16:00)
復路
ANA2177 (羽田17:30-伊丹18:50)
JAL 3009(羽田18:25- 伊丹19:55)
両社ともほぼ同一時間帯ですので利用者は限られ、また大宮や池袋といった埼玉旅行の拠点となる場所への移動を考えると、成田空港を使うメリットはほとんどありません。ただし羽生など埼玉県東部へ行く場合は、成田空港を利用したほうが短時間で到着する場合があります。
3.関西空港-羽田空港から埼玉旅行
おすすめはスターフライヤー(SFJ・MQ)
関西空港は国際線が多く、いろいろな航空会社が乗り入れてますが、羽田便に関して言えば、基本的にはANA・JALの他、SFJ(スターフライヤー)のみです。海外航空会社のコードシェア便というのがありますが、搭乗するうえでは気にする必要はありません。コードシェア便は他の航空会社と共同で運行している飛行機という意味です。ANAかJALいずれかの便名がつけられ、同様に購入でき、搭乗手続き等も同じです。
スターフライヤー(SFJ)に関しては念のため一言触れておきます。スターフライヤーは北九州に本社を置く航空会社で、当初は羽田空港ー北九州空港の単独路線のみの航空会社でした。ここで現在乱立する航空会社発足の流れを簡単に説明すると、当初ANA・JALの2強体制で、2社で日本の航空路線を分け合っており、2社重複路線は価格も同一で価格競争などはほぼない状態でした。そこに1998年スカイマークが参入、北海道便を中心とするエアドゥ、九州便を中心とするスカイネットアジア(現ソラシドエア)が現れ、航空運賃の価格競争が始まりました。その次に現れたのがスターフライヤーです。これら4社の新規参入組は、その後参入してきたピーチ、ジェットスター、エアアジアなどのLCC(ローコストキャリア)とは完全に別物と考えるべきでしょう。LCCは空席率によって価格が変動しますから、必ずしも通常の航空会社より安いとは言えません。
スターフライヤーの特徴は黒い機体と革張りのシートで、発足当初より現在まで一貫しています。座席間隔も広めで、全座席に大型モニターもついています。普通席の居住空間としては国内最高レベルと言えます。
上記のサイトで価格を比較することができますが、ANA・JALに比べスターフライヤーの価格が安いことがわかります。ANAのプレミアムシート、JALのクラスJなどを除く普通席同士で比べた場合、SFJの居住性は勝っていますが、価格でいうとSFJが安く、コストパフォーマンスでいえば完全にANAやJALを上回っていると言えます。
ただ、関空-羽田のスターフライヤー便は片道4便しかなく、往路の一番早い便は11:00、復路の最後の便は16:30であるため、早朝出発して、夜遅くに戻ってきたい旅行者には不向きという欠点があります。またスターフライヤーのロゴの文字は細かいため、空港の掲示板表示が読めず不安になるかもしれません。スターフライヤーの便名はMQから始まりますので、便名を覚えておいたほうが良いと思います。
飛行機をよく使う人には周知のことかもしれませんが、便名の頭のアルファベットは航空会社ごとに与えられている2レターコードと呼ばれるもので、JALであれば「JL」、ANAであれば「NH」から始まります。3レターコードというのもあり、JALは「JAL」、ANAは「ANA」とそのままですが、スターフライヤーは「SFJ」となります。
埼玉への旅行に関西空港を使う場合においても、やはり羽田空港へ到着する便の方が時間的に有利になります。関西空港からの成田便はLCCが多く、価格面では優位になりますが、LCC利用の場合は荷物の制限、欠航時の対応座席の居住性など何かと不便な面もあります。不安であれば、関空ー羽田のスターフライヤーはANAやJAL同等以上のクオリティーで価格も安いおすすめの便です。
4.関西空港ー成田空港から埼玉旅行
関西空港ー成田空港の路線はピーチとジェットスターという2社のLCCのみが就航しています。そして一般的に新幹線、飛行機を含めこのルートが最も安く埼玉旅行へ行けるルートと言えます。繰り返しになりますが、LCCは常に安いわけではなく、例えばお盆時期やゴールデンウィークなどの需要が高い時期には、ANA、JAL、スターフライヤーより高い場合も普通に見られます。しかし閑散期などはANA、JAL、スターフライヤーよりも数千円安いことも多く、それらを平均すると明らかにLCCの価格は安いといえます。
まず関西空港でLCCを利用する場合、チェックインカウンターの場所を押さえておく必要があります。関西空港は関西空港駅の目の前にある第1ターミナルビルに国内線のチェックインカウンターがありますが、国際線やLCCは駅から離れた第2ターミナルビルにあるため、まず連絡バスに乗り第2ターミナルに行く必要があります。しかし、LCCであってもジェットスターの国内線のみは第1ターミナルにあります。関空において、ピーチは第2ターミナル、ジェットスター国内線は第1ターミナルということは覚えておいてください。(成田空港の場合、ピーチは成田空港第1ターミナル、ジェットスターは成田空港第3ターミナルです。復路に成田ー関空線を利用する場合は特に注意してください)
LCCは航空会社自身のサイトで購入するした場合、オプションの有無などサイトの操作が非常に煩雑です。また予約を進めていくと、そのまま決済になり、一度決済してしまうとその後変更できません。日付や人数などを間違えたまま決済してしまうということが頻発しています。旅行会社の場合、旅行会社の社員が一度目を通して決済するため明らかな間違いは防ぐことができます。LCCの航空券の購入は、慣れない場合は旅行会社のサイトなどで購入することをお勧めします。
ena(イーナ)は官公庁登録1種旅行業を持つ旅行会社、エアプラス株式会社が運営するオンライン航空券購入サイトで、この手のサイトとしては最も実績があり安心して使えるとともに、操作性や見易さにおいても現時点で最もおすすめできます。直接航空会社から購入する場合においても、簡単に航空会社同士を比較できますので、まずチェックしておくべきでしょう。
トップ画面の一番目立つところに検索窓が表示されます。料金を調べるだけであれば、まず片道を選びます。今回の関西ー成田を調べたい場合は、出発空港を「大阪(関西)KIX」、到着空港を「東京(成田)NRT」とセットします。往路出発日というところをクリックするとカレンダーが表示されますので、任意の日付を選び、「最安値を検索」というボタンを押してください。そうするとジェットスター4便とピーチ2便の出発時刻、到着時刻、便名と料金などが表示されるはずです。料金順に並んでいますが、出発時刻順に並び変えることもできます。絞り込み機能も付いていますが、この路線の場合6便しかないため、絞り込む必要はないでしょう。
往路の関西空港から成田空港の便は以下の通りです。
関西 → 東京(成田)
ピーチ MM(APJ)311 関空発07:15-成田着08:45
ジェットスター GK(JJP)200 関空発08:00-成田着09:25
ジェットスター GK(JJP)202 関空発12:20-成田着13:50
ジェットスター GK(JJP)204 関空発14:35-成田着13:50
ピーチ MM(APJ)319 関空発20:40-成田着16:05
ジェットスター GK(JJP)212 関空発20:40-成田着22:15
ピーチの便名がMM、ジェットスターがGKですが、enaのサイトでは3レターのAPJ、JJPで表示されています。
成田空港から埼玉各拠点への移動
上記のいずれかの便で成田空港に到着し、埼玉県の各拠点(池袋・大宮)を目指すことになりますが、最も基本的な行き方が、成田空港から京成電鉄の成田スカイアクセス線スカイライナー(以降京成スカイライナーと呼びます)に乗り、日暮里でJRに乗り換え池袋または大宮に向かう方法です。
京成スカイライナーの基本停車駅は成田空港駅・空港第2ビル駅・日暮里駅・京成上野駅の4駅です。成田空港の第1ターミナルには成田空港駅、第2・第3ターミナルは空港第2ビル駅で乗車することになりますが、その次の駅が日暮里駅(にっぽりえき)です。つまり成田空港を出たあとは、ノンストップで日暮里まで40分程度で到着するということです。(一部列車は青砥(あおと)・新鎌ヶ谷(しんかまがや)で停車し、その時は10分程度のタイムロスがあります)
日暮里駅も浜松町駅と同様、JR山手線とJR京浜東北線が平行する区間にありますが、日暮里駅の場合その他に常磐線や、駅外に日暮里舎人ライナーなどがある分、心配に思うかもしれません。しかし日暮里駅の駅舎自体はそれほど大きいわけではなく、事前に駅の構成を理解していれば簡単です。ポイントは京成電鉄の駅構内から外に出ず、JRの乗り換え改札を通過することです。JRの構内にさえ入れば、3・4番線の常磐線以外は山手線と京浜東北線しかありません。
日暮里駅で一番奥の12番ホームから京浜東北線に乗ると、40分弱で大宮駅に着きます。途中で宇都宮線などに乗り換えることもできますが、それほど時間短縮にはなりませんので、そのまま京浜東北線で大宮まで行くのが無難でしょう。その向かいの11番ホームで山手線内回りに乗ると約15分で池袋に到着します。
スカイライナーは全席指定席のため、1300円の指定券(特急券)を事前に購入する必要があります。成田空港から池袋までの乗車券が合計1450円、成田空港から大宮までからの乗車券は1760円ですから、それぞれ片道2750円、3060円ということになります。これが成田空港から池袋・大宮への基本ルートと考えてください。せっかくLCCで航空券代を安くしたのに、この料金はもったいないと思う場合は、ここでは紹介しませんが、他にもいろいろな行き方があります。
大阪の南海電鉄は、この京成スカイライナーとコラボし「京成×南海 特得チケット」という割引チケットを販売しています。このチケットはなんばー関西空港間を走る南海電鉄の空港特急ラピートと京成スカイライナーをセット購入することによって特急券が割り引かれるというものです。私はこのラピートに乗車したことがありませんが、時間短縮できるだけでなく、丸い窓、レトロな内装などデザインが非常に特徴的で、いずれ乗車したい列車です。割引金額はたいしたことはありませんが、京成スカイライナーと南海電鉄ラピートの双方を利用するなら、このチケットを利用すべきでしょう。